≪検証 その2≫ 『信頼』、『対左』、『打撃指数』による打撃成績への影響
『ベストプレープロ野球全書』にはパラメータについての検証が詳しく書かれている。
但し、ベスプレ全書は’99版がベースで書かれているので、’00版にそっくりそのまま当てはまるとは言えないだろう。
それでもパラメータの傾向はシリーズ共通だと思われるので、参考にしつつ検証することにする。
検証にはオリジナルデータを使い、尚且つ単一チーム(つまり12球団同じチーム)で、総当り戦で行うことにした。
その上で、1シーズンの成績(12チーム分)×10シーズンの平均値で比較してみるというもの。
当然ながらこれよりサンプル数を増やせばより正確な値が出てくるであろうことは承知しているが、それには時間と労力が必要な事をご理解頂きたい。
何にしても妥協は必要である・・・もし、より正確を期するのであれば同様の検証を数多くこなしてもらえればよいかと思う。
ベスプレ全書によるとタイプごとの直球(ストレート)の割合は以下のようになっている。
B+ | B | A | A+ | C | D |
67.5% | 67.4% | 48.6% | 43.2% | 38.0% | 9.2% |
これを見るとタイプB、B+はほぼ同じで、投球の2/3が直球ということになる。
タイプ別説明文では”本格派”とされるタイプAでも約半分、軟投派のタイプDに至っては1/10程度だ。
「ベスプレ投手において、どんな変化球よりも速球が一番の球種である」とどこぞで聞いた記憶があるのだが
確かに、球速もタイプもほぼ同じなのに、『切れ』『制球』がS・Aの投手よりB・Bの投手の方が奪三振数が多かったりする。
単純に考えたらパラメータが良い方がより良い成績を残すと思うのだが・・・何故だ??
『切れ』のパラメータは変化球割合に影響が出るものだが、本来は球そのももの切れ(直球も変化球も)に関係するはず。
ならば『切れ』の良い球を投げる方が成績が良くなると言えるのではないだろうか?
もしかすると『切れ』パラメータの違いで「直球割合が増えて奪三振数が増える」のではないだろうか?
ストレートでガンガン三振を取れる投手にするにはどうしたら良いのか検証してみた。
被験体は、球速145km以上・タイプBまたはB+という条件で”ヤクルト・石井一”とした。
オリジナルデータは≪ヤクルト・石井一 L B 148 A E C B C B 24≫である。
切れをA〜Eの5段階、制球はA・C・Eの3段階、計15パターンを計測した結果は以下の様になった。
制球A | 制球C | 制球E | |||||||
防御率 | 四死球 | 奪三振 | 防御率 | 四死球 | 奪三振 | 防御率 | 四死球 | 奪三振 | |
切れA | 2.40 | 49.30 | 193.29 | 2.77 | 65.69 | 177.09 | 3.20 | 84.85 | 159.16 |
切れB | 2.33 | 48.73 | 197.37 | 2.68 | 64.44 | 182.52 | 3.18 | 84.88 | 166.26 |
切れC | 2.31 | 48.31 | 210.59 | 2.69 | 64.75 | 192.88 | 3.10 | 86.32 | 172.63 |
切れD | 2.39 | 49.23 | 215.66 | 2.67 | 63.00 | 199.63 | 3.18 | 82.38 | 180.18 |
切れE | 2.30 | 49.29 | 222.72 | 2.68 | 64.58 | 205.33 | 3.10 | 82.20 | 186.48 |
結果はご覧の通り。数値の太字はその項目内での最高値。
まずは各制球ごとの違い、表を横方向で見てみよう。
制球のパラメータが良いほど成績が良くなっていくのが分かる。
特に防御率と四死球は違いが大きく、ベスプレ全書にもある通り「防御率と四死球に深い関係がある」のは間違いないようだ。
次に表を縦方向に見てみよう。
各『制球』の値ごとの防御率及び四死球の変化は誤差範囲ともとれる数値だが、『切れ』を下げていくと明らかに奪三振数が上がっている。
つまり『切れ』は防御率や四死球にはそれほど関係性が無いということだ。
四死球と関係性が無いのは分かるが、『切れ』が悪い方が成績が良くなっていくのはどうしてなのだろう?
切れが悪い=変化球が甘い=打たれ易い=防御率が下がる、という構図では無いのだろうか?
もし直球と変化球の割合に『切れ』が関係無いのなら、変化球の切れが悪くなった分だけ成績が悪くなってもいいはずだ。
ベスプレには配給理論というものが無いので、(調子が良くも悪くも)その時一番良い球を投げてくる。
実際に球種ごとカウントしたわけでは無いが、データを見る限りでは『切れ』が悪くなったことであまり変化球を使わなくなり
直球を多く投げるようになって、奪三振が多くなった=防御率が下がらなかった、と言うことではないだろうか。
実際のプロ野球投手で『切れ』がDやEに当たるというような投手は滅多にいないだろう。
だが、マンガやアニメに出てくるような豪速球だけで三振をバンバン取ってくるような投手を再現したいならば
球速・制球を高目に、切れを低目にすれば、それらしくなるかもしれない。
※補足
今回『切れ』を下げて成績が良くなったのは、直球割合の多いタイプB系で、そこそこの球速を持っていたからである。
元々変化球割合の多いタイプだと、生命線である変化球の切れの影響はもっと大きくなるし
同じタイプB系であっても、球速が遅いと直球自体が打たれやすくなるので成績は悪くなる。
※補足2
配給理論、つまり捕手のリード面についてのパラメータはベスプレには無い。
捕手の守備力が投手の『安定』に関わっている事は確かだが、投球の内容はあくまでも投手の出来如何ということになる。
ストライク先行の場面で遊び球がほとんど見られなかったりするはこの為だろう。
「四死球や奪三振の数をシーズン総数だけ」で比べてしまうのは
「投手が好投を続ける=イニングが増える=四死球や奪三振の数が増える」ことに繋がり、不公平なのではないか?
との思いから再度検証してみることにした。
そこで今回はイニング数も計測し、一試合平均(総数をイニングで割って9を掛ける)でも比較してみました。
再検証の結果は以下のとおり。
制球A | ||||||
防御率 | イニング | 四死球 | 四死球率 | 奪三振 | 奪三振率 | |
切れA | 2.39 | 191.46 | 48.43 | 2.28 | 193.88 | 9.11 |
切れB | 2.46 | 190.90 | 48.38 | 2.28 | 201.25 | 9.49 |
切れC | 2.32 | 190.63 | 48.23 | 2.28 | 209.06 | 9.87 |
切れD | 2.34 | 190.20 | 48.42 | 2.29 | 216.40 | 10.24 |
切れE | 2.35 | 190.08 | 49.07 | 2.32 | 220.54 | 10.44 |
制球C | ||||||
防御率 | イニング | 四死球 | 四死球率 | 奪三振 | 奪三振率 | |
切れA | 2.71 | 185.56 | 64.06 | 3.11 | 176.01 | 8.54 |
切れB | 2.70 | 185.36 | 63.70 | 3.09 | 184.93 | 8.98 |
切れC | 2.56 | 185.38 | 66.30 | 3.22 | 192.95 | 9.37 |
切れD | 2.58 | 185.03 | 65.81 | 3.20 | 199.86 | 9.72 |
切れE | 2.68 | 183.93 | 63.92 | 3.13 | 205.28 | 10.04 |
制球E | ||||||
防御率 | イニング | 四死球 | 四死球率 | 奪三振 | 奪三振率 | |
切れA | 3.15 | 178.22 | 84.26 | 4.26 | 162.18 | 8.19 |
切れB | 3.03 | 178.90 | 84.56 | 4.25 | 166.94 | 8.40 |
切れC | 3.07 | 177.67 | 83.24 | 4.22 | 177.33 | 8.98 |
切れD | 3.00 | 177.98 | 83.03 | 4.20 | 184.22 | 9.32 |
切れE | 3.09 | 176.78 | 83.31 | 4.24 | 186.95 | 9.52 |
以前と同じ検証パターンでやったつもりでしたが微妙な数値の違いは出ますね。
ただ、全体の傾向としては同じ結果(方向性)は出ていると思います。
特に今回注目したイニング数は、『切れ』を変えただけの場合ではほとんど変化が見られず
四死球も数・率ともに誤差の範囲で、単純に奪三振だけが増えていることが分かりました。
この「奪三振だけが増える」ことを以前の検証でも不思議に思っていたのですが、
防御率、四死球、そして今回のイニング数と、どれもほとんど変わらないのに、なぜ奪三振だけが増えるのか?
『切れ』が変化球に影響するのは分かりますが、投球内容の1/3を占める変化球の出来が悪くなれば
当然結果に現れるはずですが、防御率を見る限り変化球が痛打されているワケではなさそう。
では増えた奪三振はどこからきたのか??
考えられるのは、ゴロアウトやフライアウトだったものが三振に変わったということ。
それも、変化球は『切れ』が悪くなっていますから、増えた奪三振はほぼ直球でとっていることになります。
しかも、トータルの防御率に変化が無いことから、変化球の悪化分を直球で補って尚余りあるということになります。
> データを見る限りでは『切れ』が悪くなったことであまり変化球を使わなくなり
> 直球を多く投げるようになって、奪三振が多くなった=防御率が下がらなかった
前検証時に上記のような解釈をしましたが、コレは特に根拠もなくただそう思っただけのことでしたが
改めて考えてみると、あながち間違ってもいなかったのだぁと思います。
実際、『切れ』AとEの試合を観戦してみると、Aは時々変化球を使うのに対して
Eは明らかに直球主体でほぼ変化球を投げていませんでした。
『切れ』のパラメータが配球(というよりも球種割合)に影響していることが見て取れますが、
この辺りは他のタイプでも検証してみて比較する必要があるかと思います。
以前からベスプレには『切れ』と”直球のキレ”は無関係(らしい)と言われていましたが
今回の検証はそれを裏付けるような結果が出たと思います。
『球速』を上げると奪三振が増えるので、これを”直球のキレ”相当のパラメータ代りとするのが好いとは思いますが
「速いのに打たれやすい直球」や「それほど速くないのに打たれにくい直球」の再現は難しいかもしれませんね。